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DLC処理の特徴

更新日:2023年9月30日

 自動車部品、アルミ加工用の切削工具、医療器具・医療用材料、ペットボトル、ゴルフクラブ・テニスラケット、ヒゲ剃りの刃等、様々な製品に活用されているのが、DLC処理(DLCコーティング)です。今回は、このDLC処理についてコメントします。


 DLCとは「Diamond-Like Carbon」の略であり、「ダイヤモンドのようなカーボン(炭素)」と表されているように、ダイヤモンドと似たような特徴を持つ炭素材料です。具体的には、ダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)両方の結合構造を併せ持っているアモルファス構造(非晶質構造)の物質が、DLCです。2つの結合構造を併せ持つことで、ダイヤモンドの硬さとグラファイトの滑りの良さを両立しています。


 DLCで素材の表面に膜をつくる表面処理をDLCコーティングと言います。DLCはもともと、皮膜として開発された材料です。そのため、DLCというだけで一般的にはDLCコーティングを指します。


 DLCは1970年代に開発が始まり、炭素材料の研究が進むことでDLCコーティンに関する製造プロセスや皮膜特性の開発も進みました。近年では環境配慮の観点からエネルギーの使い方やエネルギー効率が重視されるようになり、装置の中でできる限りエネルギーを無駄にしない工夫も求められるようになっています。


 こういった背景から、部品の耐摩耗性と潤滑性を向上させることでエネルギー効率の向上に役立つことのできるDLCコーティングが注目を集めています。


 このダイヤモンドとグラファイトの特性を併せ持つDLCには以下のような特徴があります。


●硬い  ダイヤモンドの結合構造を持つことから非常に硬い皮膜をつくることができます。また、ダイヤモンドとグラファイトの比率を変えると、幅広く硬さを変えることも可能です。


●滑りが良い  グラファイトは滑りがよく固体潤滑剤やオイルの添加剤としても使われます。DLCもこの滑りの良さを持っています。


●電気を通す/通さない  グラファイトは電極としても使われるように電気抵抗が少なく導電性に優れます。DLCもグラファイト比率を高くすることで導電性を持たせることが可能です。一方、ダイヤモンドは絶縁性のため、ダイヤモンドの比率を高くすると電気を通しにくいDLCも可能です。また、DLC中に水素を含ませることで電気を通しにくくすることもできます。


●表面が均一で滑らか  原子レベルで結びついているアモルファス構造のDLCは表面が平らで滑らかです。


●化学的に不活性  DLCは化学的に安定していて不活性です。他の物質と結びつきにくい特徴があります。


●錆びない  炭素を主成分とするため、他のコーティングに使われる金属皮膜素材のように錆びることはありません。


●膜の厚さによって光り方が変わる  グラファイトの特徴を持つDLCは黒光沢色となりますが、膜を薄くすることでダイヤモンドの透過性を発揮し、赤茶や青などさまざまな色に光り方を変えます。


一方、DLCコーティングをする手法として、次の3つの方法があります。


■AIP(アークイオンプレーティング)

 AIPではダイヤモンドの結合構造に近い高硬度のDLC形成が可能ですが、高硬度のDLCは低温での形成が必要なため、成膜速度は遅くなります。

■PECVD(マイクロ波・高周波・パルス・DCなど)  一方、PECVDは高速の成膜も可能ですが、原理的に必ず水素を含有するため、比較的低硬度のa-C:H(アモルファスカーボンに、水素が含まれているとHが付く)の形成に使用されます。

■スパッタリング  スパッタリングは高硬度の皮膜形成には不向きで、成膜速度も早くありませんが、成膜プロセスが安定していることから膜質や膜厚を高精度で制御できる特徴を持っています。





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