近年、製造業でよく使用されている炭化水素洗浄(hydrocarbon cleaning)は、炭化水素系洗浄剤を使用した洗浄です。炭化水素系洗浄剤は、「フロン」や「溶剤系洗浄剤」が規制強化により使用が難しくなる中で、洗浄性が非常に高い洗浄剤として開発され、工業分野における主要な洗浄剤として普及しています。この炭化水素系洗浄剤は、真空洗浄・真空乾燥という技術を併用することで、より高い洗浄性、乾燥性、安全性を発揮することが可能となりました。
炭化水素系洗浄液洗浄剤を使った洗浄では、「真空洗浄+真空乾燥」を加えた「炭化水素系真空洗浄乾燥機」とすることが一般的ですが、そのメリットは以下の通りです。
①安全性確保
真空状態だと火気があっても引火しません。引火性のある炭化水素系洗浄剤は大気圧下でのベーパー・蒸気洗浄は危険でしたが、真空下で実施することで安全性を確保しています。
②袋穴・止まり穴の洗浄が可能
径が細い止まり穴、袋穴、隙間が細かいワークは、従来の大気圧洗浄では洗浄液が浸透せずに洗浄できませんでしたが、炭化水素系洗浄における真空洗浄では、真空下と大気圧状態を往復させることで、微細な隙間のある洗浄も可能となります。
③真空にすることで超音波の効果が数倍 真空下では大気圧下に比べて超音波がより効果的になります。
④真空下だと洗浄液の沸点が下がり、より低温での乾燥が可能
気圧を真空に近くすることで沸点の温度を下げることが可能となり、低温での乾燥が可能となります。低温での乾燥は、ワークへのダメージや装置への負荷の点からもメリットがあります。
炭化水素系洗浄で使われる洗浄方法
真空洗浄、超音波洗浄、揺動洗浄・バスケット回転洗浄、エマルジョン洗浄、ベーパー洗浄(仕上げのすすぎ)、噴流洗浄、浸漬洗浄 等の洗浄方法があります。
これらの洗浄方法をいくつか組合せることが一般的であり、また、真空洗浄・乾燥とすると、難洗浄の代表例であるめくら穴(止まり穴)の付いた部品、面と面が張り付いた部品、インサート成型品のインサート部の隙間の洗浄等に有効です。
炭化水素系洗浄で使われる乾燥方法
真空(ベーパー)乾燥、吸引乾燥、熱風乾燥 等の乾燥方法があります。
これらの中で、現在は真空乾燥が主流になりつつあります。
炭化水素系洗浄の工程
炭化水素系洗浄(乾燥機)の洗浄工程は下記のような4工程となるケースが多いですが、ワークの汚れ具合や必要な清浄度によって、これらの工程は増減します。
(工程例)
第1工程:荒洗浄
第2工程:仕上げ洗浄
第3工程:すすぎ洗浄(ベーパー)
第4工程:乾燥
槽の構成の決定
工程が決まると同時に、それをどう実現するかも検討が必要です。最もシンプルな1工程=1槽とする場合もありますが、タクトタイムに余裕がある場合は1槽で複数工程を行うこともあります。
・1槽で洗浄・すすぎ・ベーパー・乾燥全てを行うシンプルなタイプ(=ワンバス式)
・2槽で洗浄工程及び乾燥工程を行う省スペース・低価格タイプ(=ツインバス式)
・槽を3槽以上にし、真空ベーパー乾燥でタクトを短くする量産向けタイプ(=多槽式)
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